小説『箱根の坂』レビュー。司馬遼太郎が描く北条早雲。戦国時代の幕を切って落とした男。

本・漫画

北条早雲を題材にした小説『箱根の坂』のレビューです。

一言レビュー:「頼り甲斐」なき組織や上司には「下剋上」あるのみ。

個人的な満足度       :10/10
労働をしたくなる度     :0/10
辞表を出したくなる度    :10/10

応仁ノ乱で荒れる京都、室町幕府の官吏、伊勢氏一門の末席に、伊勢新九郎、後の北条早雲がいた。

家伝の鞍作りに明け暮れる、毒にも薬にもならぬ人間で生涯をことなく送るのが望み、と考えていた。

だが、妹分の美しい娘、千萱(ちがや)の出現が、彼の今までの生き方を激変させる契機となり覇者への道を歩み出した。

引用元:箱根の坂 / 司馬遼太郎

室町末期という「下剋上」が当たり前じゃない時代に、「下剋上」を始めた北条早雲とはどういう人物だろう?

というのが、本書を読みだした動機です。

伝統的日系企業でさえも、子会社の身売りや早期退職をし出す昨今、年功序列&終身雇用への信頼は右肩下がりです。

正直、世代によっては「割に合わない」の一言ではないでしょうか。

そんな現代の空気感と、この小説が舞台となった室町末期に「過渡期」という類似点を見出しました。

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室町末期という時代背景に既視感を感じる

本作の舞台である室町末期が面白い。

役職者であるはずの、足利将軍家や各地の守護は揃って、役職という権威をかざすのみ。

徴税した財で私腹を肥やし、京都でパワーゲーム(役職の奪い合い)に興じる。

一方で、各地の地侍たちは、自ら開墾した土地を耕し、技術革新(農具)と共に、個の実力を付け始める。

なんだか、現代日本社会と日系企業みたいで、既視感たっぷりです。

頼うだる人と北条早雲

そもそも人は「頼うだる人」のために加勢をする。役職者の権威のためではない。

本作では、人間関係の基本を確認するように何度も強調されています。

※以下、「頼うだる人」の引用。

人の悲しみをわが事のように泣き、敵にたいして生命を賭けて立ち向かう人間、

敵ばかりか自己の弱点をも見抜き、「胸三寸に深い湖のように水をたたえた」心の持主

引用元:箱根の坂 / 司馬遼太郎

そして、役職者が「頼うだる人」でない以上は、「下剋上」せざるを得ないというのが北条早雲の選んだの生き方となります。

ただし、「下剋上」が当たり前ではない時代。

常に北条早雲には「下剋上」へのためらいが見え隠れします。

この辺りも、現代日本社会のサラリーマンにとっては共感できる描写だと思いました。

まだまだ「転職へのためらい」ってありますよね。

時代の過渡期だからこそ、慎重に

本作での北条早雲の印象は「慎重」の一言です。

まだ表向きには「下剋上」は不義理だという時代。

周囲の人間との摩擦が起きぬように、慎重に、静かに、時間を使って事を進めていきます。

実質的には「下剋上」をしていながら、表向きは「義理堅い」自分を演出している。

時代の過渡期には、一本気な生き方だけでは足りないのかもしれません。

まとめ

本作は「伝統的日本企業」や「上司に恵まれない」といったキーワードが刺さる会社員にとって、楽しく読める小説だと思います。

北条早雲のように「下剋上」とまでは行きませんが、時代の終わりにおける処世について、ヒントを得ることが出来ると思います。

最後まで読んで頂いた方、ありがとうございます。
ゆっくり急げ(アウグストゥス:初代ローマ皇帝)

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