中学受験を題材にした漫画『二月の勝者』のレビューです。一応、元中学受験生&某県の御三家出身という僕から見ても、驚異的なほどリアルな出来栄えの漫画です。在りし日の気持ちが蘇り、胸が熱くなりました。
一言レビュー:君達が合格できたのは、父親の『経済力』。そして、母親の『狂気』。
個人的な満足度 :10/10
労働をしたくなる度 :5/10
辞表を出したくなる度 :5/10
あらすじ
主人公の黒木蔵人は、中学受験生向けの大手塾”フェニックス”(がり勉な校風だが、進学実績は抜群。SAPIXがモデル?)の有名塾講師。
ある日、黒木は中堅塾”桜花ゼミナール”に電撃転籍するも、アットホームな校風だが進学実績はイマイチな同校では、黒木への反発が起きてしまう。
中学受験に挑戦する塾講師、両親、子供のそれぞれの視点から、中学受験をリアルに描く。
あまりにリアルな出来栄えなので、作者の高瀬志帆先生も元中学受験生なのかな?と思ったのですが、そんなことは全くないそうです。下記の漫画を描く仕事をされた縁をきっかけに、取材をし始めたんだとか。凄いの一言です。
また本作は2020年7月から、ドラマ化(柳楽 優弥が主演)が決定したようです。今後の展開が楽しみです。
ちなみにヒロインは井上真央さんが演じるみたいですね。僕が塾の夏季講習から帰った後に見てた『キッズウォー』で「ざけんなよ!」って言ってた井上真央さんが、中学受験の塾講師を演じるとは何だか不思議な気持ちです(笑)
業界初のエンタメ作品?中学受験をリアルに描写
本作は塾講師、両親、子供の各視点から中学受験をリアルに描写しています。
そのリアルさは、元中学受験生として、在りし日の気持ちを思い出し、胸が熱くなるほどの出来です。
昔から「中学受験は子供にかわいそうだ」とか「塾通いの子はおかしい子が多い」といったネガティブなイメージで語られることが多い中学受験なのですが、是非とも本作を通して、より正確な認識が広まれば良いなと思いました。
ちなみに、僕も小学校の教師などから「中学受験をする」という理由で、違和感のある対応を受けたものです。。
元中学受験生は懐かしい気持ちになる
本作は、元中学受験生としては、昔の自分を思い出す感情移入できる作品だと思いました。
例えば、スラムダンクは面白い漫画です。僕も大好きな漫画です。
でも、バスケに打ち込んでいる人にとっては、より面白く読める漫画なのだと思います。
同様に、元受験生にとって本作は、当時の葛藤や充実感などを思い出しながら読める中学受験漫画だと思います。いや、本当に懐かしいです。
昔の中学受験と違うところがまた面白い
当たり前ですが、僕が中学受験生だった頃とは、中学受験業界の様子は変わっているのだと思います。
この点、本作は最近の中学受験界隈を知れて面白いです。
しかし、今の中学受験生はスマホとかゲームとか誘惑が色々とあって大変ですね。ちなみに、クラス分けテストとか選抜合宿は昔から存在してました(笑)
中堅塾出身の中学受験生だと、さらに面白い
本作では、主人公・黒木が教鞭をとる中堅塾”桜花ゼミナール”(アットホームな校風だが進学実績はイマイチ)は、大手塾”フェニックス”(がり勉な校風だが、進学実績は抜群。SAPIXがモデル?)に挑む展開でストーリーが進みます。
実は僕自身も某県を拠点にした中堅塾の出身なので、この設定は胸が熱くなりました。
しかし、僕が中学受験をした時は、大手塾(SAPIXとか日能研など)と中堅塾にそこまで差はなかったんですけどね。ちょっと悔しいです(笑)
中学受験を目指す親にとっては入門書的役割も
本作は、中学受験を目指す親にとって良い入門書になるかもしれません。
本作でも描かれていますが、中学受験は子供だけが頑張れば良いという性質ではないです。
良く悪くも、子供にはまだ自主性はなく、中学受験の成否はまさに親の采配次第という側面は否めないのです。
塾の選択、講習や補講授業の選択、家庭でのフォロー(テキストの内容や過去問は親でも教えれる状態が望ましい)、モチベーション管理など、親が担う部分は少なくないのです。
本作を読むことで、中学受験の性質を理解し、受験生の親として適切なマインドセットが可能になると思います。
まとめ
本作は「元中学受験生」から「これから中学受験を挑戦する親子」まで、中学受験に関わる人にとって、楽しく読める漫画だと思います。
一見「二月の勝者」という挑戦的なタイトルではあるものの、本作を読めば、作者が中学受験に対して真摯に向き合い、正確に描写してくれていることが分かると思います。
僕自身も親となった今、本作を読みながら子供の教育について、改めて考えてみたいと思いました。
最後まで読んで頂いた方、ありがとうございます。
ゆっくり急げ(アウグストゥス:初代ローマ皇帝)
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